ちとせまち



それは、ある夏の夜のことだった。



これから起こる出来事や、今までの惨事など、これっぽっちも知らないかのように
外は今日も快晴だった。

輝く星空に、不気味なほど白い満月が、ある町を走り行く
2つの人影に光をおとしていた。


「何故?」


信じられないものを見た驚きと、深い悲しみ、そして・・・


「何故なの・・・?」


そして、半分泣き叫ぶような声が聞こえる。
その声の主のすぐ後ろには、彼女のもっとも大切にしている人物がいた。

・・・・・・・・?

いや、もっとも大切にしていた、人物がいた。
大声で笑いながら手を振り回してこっちへ向かってくる。


逃げなきゃ。


彼女は思った。


逃げないと全てが終わってしまう。
夢も、約束も、希望も。

何もかもが。



少女は自分の持てる力全てをもって走った。
しかし相手の足はつい10分程前までは想像もつかないほど速くなっており、
少女のスピードと比ではなかった。

そしてついにその手が少女の肩を捕らえ、勝利の雄叫びが町中に響いた。







少女は悲鳴をあげた。










次へ・・・


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